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私的工務店論・第3回「インターネットは隕石」

新建ハウジング・プラスワン「私的工務店論・第3回」

 もともと私は、膨大な情報があふれる首都東京における折り込みチラシの有効性に疑問を持っていた。チラシをばら撒き、見込み客を集めようとも、都内の一等地は土地価格が高く、展示場を建てて見学していただくだけの資金的余裕があるはずもない。このため創業から数年の間は、数奇な出会いによって弊社のクライアントになった建て主を除いて、建売分譲業者の下請けでもいいから何とか食いつなぐことを余儀なくされていた。
 試行錯誤を繰り返し、創業1年が過ぎた頃だった。1999年11月に開催されたコムデックス(世界のエレクトロニクス企業が集まる国際会議)の基調講演で当時ソニーのCEOを務めていた出井伸之氏が「インターネットは隕石だ!」と発言して話題を呼んだ、という記事を偶然目にした。およそ6500万年前に巨大隕石が地球に落下し、地球全体の気象条件が変動し、生態系に決定的な変動を起こしたことに喩えたもので、その言葉に反応して体に電流のようなものが走った感覚を今でも忘れることができない。
 このとき、小さな資本投下で、収益を生むことができるのはITしかないと直感したのだ。限られた経営資本を、工務店本来が持つべきモノづくりをするための現場力へ投下する一方で、集客コストを徹底的に絞り込む。それが可能になると考えたのだ。またWEB上では大も小もなく、今後はビジネスも個人化していくに違いなく、オーダーメイド商品やサービスをONE TO ONEで供給することを求められる新たなビジネスモデルに転換してゆくと確信を深めた。

 期せずして「デザイン住宅ブーム」が起きていた。そんな需要に応えるようにインターネットを通じて若手建築家によるプロポーザルアクセスが始まり、団塊ジュニア世代を中心に、素性を知らない建築家へ気軽にアクセスできる気軽さから、瞬く間に若手建築家と住まい手を結ぶ回路がつながった。
 私はこのタイミングに合わせ、「ekrea(エクレア)」部品販売を、少し遅れて「ekrea」オーダーキッチン事業を立ち上げた。住宅建築事業を併せると、3本柱となる事業構築を目論んだことには私なりの読みがあった。
 1.それぞれが、将来自立した収益事業になること。
 2.パーツ販売を行うことで、建築部品やキッチン部品などの多くの情報を持つことが可能になり、仕入れコストを低減でき、顧客満足度を向上させられる。
 3.星の数ほど存在する工務店の中にあって独自化を推し進めることが可能になり、3つの事業が相互リンクすることで、パブリシティ効果を高めることができる。

 これらの考え方を軸に、WEB戦略に特化することを決めたのである。
 WEBは鮮度が生命線となる。そこで当時の工務店としては希有だった広報室を設け、ITを利用した広報活動を推し進めた。その結果狙いどおりに集客コストは下がり、現場力育成に力を注ぐことが可能になった。ITを中心にした情報社会は、迅速に情報を整理・分析することで価値を創出することができる時代でもあったからだ。
 しかし、インターネットの利便性が波及してゆくにつれ、様々な問題点も浮き彫りになってきた。住宅そのものがもともと図面と仕様書だけのバーチャルな情報だけで取引されている商品であるがゆえに、モノづくりに関して稚拙なノウハウしか所有していない住宅会社までが、ホームページ上に綺麗な画像を羅列し、自画自賛を始めてしまったのである。もともと住宅の品質や性能に対し、免疫がない住まい手の一部は、格好良い家に憧れ、その渦の中に引き込まれていった。
 だが、このようなバーチャル全盛の中にあっても、住宅供給者としての軸足をモノづくり・家づくりに置いていたことが、今思うと適切な判断だったと考えている。

清水 康弘

 新建ハウジング・プラスワン「私的工務店論」 2009年4月号 新建新聞社

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