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「理科系工務店のススメ」~野池学校を通じてわかったこと~ 1/2

新建ハウジング・プラスワン「理科系工務店のススメ」

 今年から私がお手伝いをすることになった野池政宏さんの「野池学校」が、5回目の講座を無事に終え、残すところ最終回のみとなりました。東京・大阪で開催されているこの学校には毎回のように遠方から参加があり、150人以上の受講者が毎回参加しています。
 この勉強会を主宰する、本誌連載でもお馴染みの野池政宏さんの活動は「自立循環型住宅研究会」や「暮らし向上リフォーム研究会」の主宰にとどまらず、営業プロモーションや温熱環境を中心にしたコンサルタント活動、セミナー活動などを通じて多くのつくり手に影響を与えています。
 この野池さんの発言で印象に残っているのは、「つくり手の皆さんは、なぜ理科的知識を軽視しているのだろう?」という素朴な疑問です。つくり手が理科的知識を身に付けることでさらに良い住まいづくりが可能になる、という真摯な思いからのアンチテーゼです。

 「Behaviorだけでは住宅は売れなくなってきた」

 顧客を獲得するためには、購買心理のプロセスを理解し、実践しなければならない。これは周知の事実です。
 集客から受注のプロモーションは「安心」「共感」「信頼」の3段階の顧客心理プロセスを経て完結しますが、受注はその心理プロセスの最終段階、信頼の獲得があって初めて実現するものです。

 さらにその「信頼」には二つの要素が内包されています。ひとつ目は「Behavior」(振る舞い)に対する信頼です。読者の皆様の会社でもお客様への言動や態度、ホスピタリティなどの社員教育・研修を行なっているところは多いはずです。
 信頼のもうひとつの要素は「Potentiality」、つまり能力、潜在力、可能性という意味合いのものです。
 決してBehaviorを軽視するつもりはありませんが、むしろそれはあたり前の対応だと捉え、工務店や設計事務所として設計知識や施工ノウハウなどを集積することや、家づくりに必要な理科的知識を習得・研鑚することが要求される時代になってきたと思います。
 顧客の立場で言えば依頼先への信頼とは、人の良さや接客などのBehaviorだけではなく、依頼先の潜在能力や可能性などのPotentialityに期待する部分がどんどん大きくなってきているようです。
 ところが、数年前に野池氏が講師を務めたある地域の木造塾の講義の冒頭で、集まった設計事務所や工務店の受講者に次のような質問をしました。「この中で住宅のQ値計算をしたことがある方は手を挙げて下さい。」残念なことに挙手したのは私を含めて数名程度しかいませんでした。
 参加者のほとんどは温熱環境を理解せず、経験と勘だけに頼り、自社の住宅設計や家づくりを自画自賛していた訳です。
 最近ではハウスメーカーの営業ですら「弊社が販売する住宅のQ値は・・」などとセールストークに理科的な話題を盛り込んでいます。ハウスメーカーの肩を持つつもりはありませんが、研究施設を所有しているような大手メーカーにはずば抜けた研究者が大勢いて、とても中小零細の設計事務所や工務店が太刀打ちできるような相手ではありません。
 ハウスメーカーの住宅供給を批判して自社の家づくりを自画自賛している暇があるのなら、もっと勉強して理科的知識の基礎レベルだけでも習得すべきではないでしょうか。
 少し前であれば、Behaviorを学び、自社のこだわりを語っているだけで家を売ることができましたが、環境対応が急務な世界情勢を受けて、信頼に足る能力を身につける必要性が大きくなってきたようです。

 「理科的工務店のススメ」

 家電量販店がオール電化リフォームに参入するというニュースが流れました。もしあなたがエアコンを買うために家電量販店に行って、どの機種を選ぼうか居合わせた店員に相談したとします。そうすると、その店員が次のような質問をしました。
 「部分間欠暖房にお使いですか?」「家の間取りは開放型ですか?閉鎖型ですか?」「お住まいになっている住宅のQ値はどれくらいですか?それによって暖房負荷が決まりますから・・」
 さらにその店員は顧客情報をヒアリングしながら、手元にあるパソコンでシミュレーションを始めました。
 「今のままのお住まいの住宅ですと、暖房エネルギー○○W位のエアコンがお勧めです。ただ住宅の性能があまり良くありませんので、住宅の断熱改修をお勧めします。そうすることで、暖房エネルギーを軽減できますし、光熱費が相当減ります、住まい方次第では、10年くらいで工事費のもとを取れますよ」
 このようなやりとりが普通に行なわれる時代が、すぐそこまで来ています。
 家電好きの日本人を取り込んでいる圧倒的な集客力がある家電量販店が、本気で住宅市場に参入したら、いよいよ工務店の仕事は激減し、リフォーム市場競合の構図も大きく変わってしまうでしょう。
 そうなる前に、我々工務店はもっと勉強して、構造や温熱環境について正しい理科的知識を身につけたいものです。
 たとえば、自社で建てた住宅で結露問題が発生した場合、断熱材メーカーなどに不満やクレームを言うのではなく、自分で結露計算する。または、温湿度測定を行ない、空気線図を読んで露点温度を把握する。また、Q値やμ値計算を行ない、年間暖冷房負荷を理解することなどを、あたり前にできるようになろうということです。
 理科的知識を身につけることで、今まで気付かなかったことが見えてきます。さらに大手企業が対応できない個別対応力が芽生えてきます。
 しだいに、〔理科的知識×個別対応×設計施工力×工務店力〕
という新しいビジョンを持って会社を再構築することが可能になってきます。

 「理科系工務店になるために」

 では、理科系工務店になるためにはどうすればよいのでしょうか?
 当然ですが、そのカギを握っているのは経営者自身です。私は仕事柄多くの工務店経営者とお会いしますが、中には思い込みや不勉強も目につきます。
 「貴社はどのような断熱材を使っているのですか?」
 「材木屋に聞かないとわからない」
 これでは話になりません。無論断熱材の物性(熱貫流率や透湿抵抗など)を理解しようともしない姿勢です。これでは良い家などつくれるわけがありません。
 このタイプの工務店に多いのは、まず経営者がしっかり理解していないということです。このような工務店は、顧客からのイメージを変えられるような新しい製品が発売されるとすぐに飛びつき、顧客からの反応が今一つであればすぐに元に戻してしまいます。これでは自社のモノづくりを自負するどころか、どんどんモノづくりの根幹が崩壊していきます。
 建材店から16Kと24Kのグラスウールが品薄だという情報を聞きました。住宅エコポイントに原因があるようです。もともと売れ筋だった10Kのタイプを使っていてはエコポイント取得の基準値をクリアできないからです。私は住宅エコポイント制度については新築とリフォームのバランスが悪く、ばら撒き経済対策だと思っていましたが、今まで断熱改修のことを理解もしていなかった工務店が取り組むきっかけとなったという意外なメリットがあったものだと、ある意味感心させられました。
 いずれにせよ、まず工務店経営者自身が理科に対する苦手意識を克服し、率先垂範して学習することです。経営者が社内で得意そうな社員を見つけて「お前がやっておけ」では駄目なのです。
 少なくても一度や二度自分自身でチャレンジするだけで、頭の中にロジックが生まれるものです。総論だけでもしっかり把握できた段階で社内に落とし込みをするように心がけることが肝心です。そうすることで、今まで定性だった判断基準が変わり、定量的・論理的に判断し、顧客に対して分かりやすい言葉と説明できる能力が芽生え、工務店の真骨頂でもある個別対応力が向上していきます。

 >>> 後半(2/2)に続く

清水 康弘

 新建ハウジング・プラスワン「理科系工務店のススメ」 2010年11月号 新建新聞社

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