施工事例「暮らしに馴染む快適な住まい〔マンション改修〕」
REFORM
Prologue
築37年のSRC造のマンションを購入された30代のご夫妻。
お施主様は北欧への留学経験やお仕事を通じて、住宅の断熱性能への関心が高く、断熱改修や内窓設置を含むフルスケルトンリノベにより住環境の快適性を向上させることを前提に設計がスタートしました。
ご夫妻
・夏も冬も快適に過ごしたいです。
・ライフスタイルや生活動線を考慮した間取りにしたいです。
・内装にもこだわりたいです。
・国や東京都の補助金を有効活用したいです。
設計者の考え
設計:須藤
・天井、壁、床を断熱改修して温熱環境を改善する。
・内窓を設置して断熱効果を高める。
・お客様の暮らしに合わせた独自の間取りをご提案する。
・内装やインテリアのイメージを3Dやサンプルで具体的にご提案する。
・節湯型の水栓や高断熱の浴槽を採用するなど設備機器でも省エネ効果を高め、国や東京都の補助金を有効活用する。
設計の考え方
Before → After
改修前
改修後
設計:須藤
【設計のポイント】
・間仕切りを減らし、日当たりの良い東南側に広々としたLDKを配置。
・ご夫婦それぞれのリモートワークスペースの確保。
・身支度時、帰宅後、洗濯時の動線を考慮した水廻りの間取り。
改修工事①
解体工事
設計:須藤
既存の内装の経年劣化や汚れが目立つ状況でした。
内窓の設置や水廻り設備の交換に対する補助金の申請には工事前の写真が必要になるため、内窓を設置する全ての既存の窓と水廻り設備の写真を解体前に撮影しました。
設計:須藤
基本的には躯体のみを残し、既存部分は全て撤去して完全なフルスケルトンの状態にしました。
現場監督:栗田
バルコニーや窓などの共用部は管理組合側の管理になるので、一部是正処置が完了するまで工事を進められない部屋があり、その部分はお引渡し後の工事になりました。
マンションリフォームでは、管理組合の承認を得るまで着手できない工事もあり、想定よりも時間がかかることがあります。
また、設計図をもとに墨出しで新規間仕切りや既存窓の位置、既存躯体精度の確認をしたところ、当時の図面よりも実際の共用パイプスペースが大きく、主に浴室・洗面廻りの設備機器の設置位置、設備配管経路の検討に時間が要しました。
改修工事②
断熱工事
設計:須藤
通常、マンションは両隣に住戸が隣接しており、外気に接する壁面が少ないことが多いのですが、今回の住戸は北以外の3面が全て外気に接しており、さらに天井面は上階のバルコニーの下に位置しているということもあり、壁、天井、床の全ての面に対して断熱材を付加しました。適切な温熱環境が得られるように計算により断熱材の厚みを求め、設計・施工を行ないました。
改修工事③
内窓設置工事
設計:須藤
内窓の補助金申請のため、設置後に該当箇所の写真撮影をしました。今回はフルスケルトン改修と併せて行いましたが、内窓は既存の住宅でも住みながら設置工事ができるため、手軽で効果の高い断熱改修方法としてとても人気があります。
改修工事④
設備工事
設計:須藤
今回はエアコン、キッチン、トイレ、洗面、浴室などの設備を全て一新する計画だったため、設計段階で補助対象製品を確認して選定しました。また、キッチンの対面化工事も補助対象になるということだったので、図面や工事前後の写真を提出し、補助上限額まで補助金を獲得することができました。
補助金の活用
設計:須藤
本件では「こどもエコすまい支援事業(国土交通省)」「先進的窓リノベ事業(経済産業省・環境省)」「令和5年度既存住宅における省エネ改修促進事業(高断熱窓・ドア)助成金(東京都)」の合計3件の補助金申請を行ないました。
設計段階での断熱材や内窓、住宅設備の補助対象製品の確認、必要書類の手配や事前申込み、工事前後の写真撮影を行ない、必要書類を揃えて申請しましたので、合計で100万円を超える補助金が無事に交付されました。
工事完了
竣工写真
こうして約6ヶ月間の改修工事が無事に完了しました。
ご夫妻
日々とても快適に過ごせています。夏は内窓を閉めて冷房を使用し、冬は内窓を開けて直射日光による日射熱を取り込むことで暖房をあまり使わずに生活できています。
日本在住のフィンランド人の友人が遊びに来て、内窓や断熱性能に感心していました。北欧の住宅に比べて日本の住宅が寒いことを体感しているからこそ、余計にそう感じるようです。
現場監督:栗田
居住者の方々には静観して頂き、工事にご協力頂けたのでありがたかったです。
設計:須藤
今回のお施主様は断熱性能を高めることを前提として、ストレスなく暮らせる間取りや内装の質感なども重視されていました。
そのため、保温保冷性能の高い「良いお弁当箱」を作り、「暮らしの豊かさ」という中身をいつでもいつまでも美味しく味わっていただけるようにという想いで設計させていただきました。
快適な住まいと日々の暮らしが馴染み、少しずつインテリアやライフスタイルなどが変わりながらも、変わらない快適性が豊かな暮らしを長く守ってくれるのではないかと思っています。
竣工後の温熱環境
設計:須藤
お引渡し後の12月からお施主様が「switch bot」による温湿度の測定を続けていらっしゃったので、そのデータを頂戴し、グラフにまとめました。
監修:尾崎
温熱性能の改善のため、ご夫妻には現在のマンションの断熱性能と改修後の断熱性能について、数値を使ってご説明いたしました。
「部位ごとの熱損失」のグラフは、窓や外壁、床、天井からの熱損失を表すグラフです。熱が逃げていく速さを表しますので、数値が高いほど断熱性能が悪いと判断します。例えば冬の場合では、数値が高いと外にどんどん熱が出ていきますので、室内が寒かったり、暖房が効にくくなります。
グラフの既存とは改修前のマンションの数値です。試算すると合計で約340W/Kでした。窓と屋根(天井)と床の断熱補強工事をすると、約160W/Kとなります。熱の逃げていく速さが約半分になると試算しました。さらに外壁も断熱補強工事をすると、約110W/Kで改修前のマンションの1/3です。
ここまで断熱補強を行えば、冬や暖かく、夏は涼しく、とても快適な室内環境になります。
監修:尾崎
冬の温室度グラフです。2024年1月25日~26日のリビングの室温と外気温を記載しております。1/25のビングの朝6時の室温が約17℃でした。寝る前に暖房(エアコン)を消してから、室温低下が3℃となっています。改修前のマンションでは、朝の室温が10~12℃前後まで下がる試算ですので、断熱改修が大きな改善となっています。
1/25の朝の9時から15時までリビングの室温が上がっていきます。これは南向きの窓からの太陽の光によって、室内が暖まっております。夜になっても室温が20℃ありますので、暖かく暮らしていることが分かりました。晴れている日は、太陽の光を窓から取込み、断熱によって太陽熱を外へ逃げにくくし、リビングの室温を暖かくしています。
監修:尾崎
続いて夏の温湿度グラフです。2024年8月11日から8月12日のリビングの室温と外気温を記載しております。8月12日お昼頃には外気温が37℃近くまで上昇しております。真夏の最高に暑い日です。室内のエアコンは、リビングの1台を運転していました。室内は26℃~28℃と安定した涼しく快適な温度を維持しています。
ちなみに8月11日18時ころに若干の温度上昇は、恐らく調理で温度が上がったと予想しております。断熱工事が冬の大寒と夏の酷暑を快適に過ごせる室内を維持しております。